あなたは私を知らなくても
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彼のことは、嫌いじゃない。
嫌いじゃないけど、好きじゃない。
大切な、仲間。
だけど、それ以上でもそれ以下でもない。
望美はこんな私を「残酷だ」と言った。
でも、しょうがないじゃないか。
私の心は、私の全てはもういない幼馴染みのものなんだから。
どれほどの年月が流れようとも、何が起ころうとも私の心は揺るぎはしない。
私の心に「彼」──九郎さんの入り込む隙はないのだ。
優しさが、痛い。
そう思いながら、私は結局彼の優しさに縋る。
今も。
「私なら、平気ですよ」
「奏多……」
彼──九郎さんは今日が還内府、有川将臣の命日であることを気にしているのだ。
あれから、一年。
もう一年も経つのだ。
私が、将臣をこの手で殺してから──
私の中に潜む鬼が、彼を殺してしまった。
私は同じだ。
あの白銀の髪を持つ、平家の将と。
戦いの中に、快楽を、悦楽を見出してしまった。
いつもは必死に自分の中に抑えつけているけれど、ふとした瞬間にその感情は首を擡げるのだ。
将臣と刃を交えながら、私ははっきりとそれを感じていた。
体中がぞくぞくした。
純粋に“楽しい”と思ってしまった。
この世界での出来事は、ゲームなんかじゃなく、現実だったのに。
剣で身体を貫けば、私の幼馴染みはいとも容易く死んでしまうのに。