あなたは私を知らなくても
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もう戻らない時を願うのは
あの日々を愛しているから
未来を願えないのは
私はまだあの時間に
囚われたままだから
君の言葉は
私の耳を空しく通り過ぎていくだけ──
《私はこの手で、》
見上げれば、十六夜の月。
もう何度も見上げた、青白く光る月。
私は十六夜の月をとても気に入っている。
満月になれなかった存在。
欠落を孕んだもの。
それは、私によく似ている。
いや、私自身だと言えるだろう。
満月になるだけの力を与えられていながら、私は絶対に満月にはなれない。
私は絶対的に欠けた存在なのだ。
不安定で、不確定要素で。
そしてそれ故に、私はこの世界に歪みを生み出しているのだ。
それくらいのこと、誰かに諭されなくても理解している。
誰よりも、他でもない私がそれを分かっているつもりだ。
それでもなお、この世界に、この生にしがみつくのは、譲れない願いがあるから。
もう一度力をつけ、遠い過去を、やり直したいと願ってやまないから。
それが他の誰かを傷付ける結果になっても、構いはしない。
「もう少し、もう少し強くなれば…」
そうすれば、きっと願いは叶うはずだ。
この祈りにも似た叫びは、きっと届くはずだ。
時空跳躍まで、もう少し。
もう少しだけ、愛してもいない「彼」の優しさに甘えていたいんだ。