髪を下ろしたあの人は
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
抱き締める腕の力を強くすれば、それに応えるように、君はオレの背中に腕を回す。
折れてしまいそうに細い腕のどこからそんな力が出るのだろうか、と思うほどに強い力で。
君はその腕の中に、必死に俺を閉じこめようとする。
まるで、逃がさない、とでもいうように。
君のその執着心は、先天的なものなのか。
或いはこの世界に呼ばれる事によって目覚めさせられたものなのか。
一体どちらなのかオレには分からない。
でもどちらでも構わない。
ただ君が、オレの側にいる。
その事実さえあれば──
君はいつしか紡がなくなった。
もう居なくなってしまった幼馴染みの名前を。
敵である還内府の本当の名前を。
失ってしまったものは、もう二度とかえってきはしない。
そのぽっかり空いてしまった心の隙間を埋めるように、君は誰かの温もりを探すのだろう。
もしもオレがそっぽを向いたら、すぐに君はこの腕を解いて誰かの腕に縋るのだろう。
それは九郎なのかも知れない。
或いは弁慶なのかも知れない。
でも、オレに、オレ達に、そんな君の行動を咎める権利はない。
だって君の大切なものを奪ったのはオレ達だから──
オレよりもずっと体温の低い身体を抱き締めながら、そっと胸の内で誓う。
君を逃がさない、と。
選んだのは君
選ばせたのも君
離れたい、なんて願いは
絶対に許さない
だって、誰でもいいと思いながら
それでも一番最初にオレの元へ来たのだから──
《終》