理想と現実のはざまで
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きっと以前に僕が話した冷え性だという話を思い出しでもしたのだろう。
雪の降る平泉なら、指先が氷のように冷たくなっていても無理はない、と。
戦の終結を迎えた嬉しさのあまりに、君は判断を誤ったのだろう。
正常な状態であったなら、人の死を何度も経験した君が、冷え性の冷たさと潰えようとしている命の冷たさを間違える筈がない。
「奏多さん、漸く君の望みが叶いましたね」
唐突に言葉を紡ぐ僕に奏多さんは小首を傾げる。
それでも、君は小さく頷いて口元を綻ばせる。
「はい。やっと…やっとです」
「次の望みはもう決まりましたか?」
「次、ですか?」
「ええ。たった今、これからの君の望みです」
僕の言葉に君は小さく唸りながら答えを探す。
次の望みなど到底考え付かない程、君はこの戦の終結だけを望んでいたのですね。
君は龍に召還されただけであって、元はこの世界の人間ではない。
この世界の争いなど、放っておいても良かった筈だ。
それでも君は、いつでも僕の隣にいてくれた。
戦いから逃れる事の出来ない宿命を背負った僕の側に。