理想と現実のはざまで
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小高い丘からは平泉の街並みが見える。
純白の筈のその風景は、今は緋色に染め上げられていて。
空から視線を落として見やれば、虚しさばかりが込み上げる。
そして同時に訪れる眩暈。
立っている事さえ辛くて、僕は無意識の内にその場に屈み込む。
近付く終わりに、ただ焦燥感ばかりが押し寄せる。
君に何か伝えなければ。
そう思うのに、何一ついい言葉が浮かんでこない。
僕がいきなりしゃがみ込んだ事を心配して、奏多さんが同じように屈む。
眉根を寄せた表情は苦しげで。
見ているこちらが悲しくなる。
「大丈夫ですか、弁慶さん?」
「心配には及びませんよ。少し疲れただけですから」
「良かった…急に屈んだから驚きましたよ」
僕の言葉を信じ、君は無防備な微笑みを見せる。
君は本当にいけない人だ。
僕なんかの言葉を鵜呑みにしてはいけないのに。
だって僕は。
最後の最後まで、愛しい君を欺こうとしている──
僕の横に腰を下ろした奏多さんはそっと僕の手を握る。
すっかり冷たくなってしまった僕の指先に、君は一瞬驚いたような表情をしていたけれど、すぐにかき消した。