理想と現実のはざまで
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冷静でいられたのは、きっといずれこうなる事を分かっていたから
逃れる事、叶わぬ事。
早いか遅いかだけの差だと知っていたから。
だから傍観してしまった。
でも身体に染み付いた本能というものは、危機に対してあまりにも従順で。
反撃しなければ。
そう頭で考えるよりも先に、身体が動いていた。
意識を取り戻した次の瞬間には、絶命した敵が虚しく転がっていて。
将でもないただの雑兵の亡骸を前に、渇いた笑みが零れた。
やはり僕の辿る末路はこんなものか、と──
それから遠くで鬨の声があがって。
戦の終わりを知った。
他人事のように、遠くを見つめた。
そして同時にじわじわと湧き上がる喜び。
それは戦の勝利の為ではなく、奏多さんの嬉しそうな笑みが見られると思ったから。
長い戦いの日々が終わり、漸く彼女に安穏な日常が訪れると思ったから。
致命傷の筈の身体に不思議と痛みはなくて。
押し寄せるのは心地良い倦怠感。
ただ苦しいのは、痛むのは切り捨てた筈の“心”だけ。