理想と現実のはざまで
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私がまくし立てるように言えば、弁慶さんは驚いたように目を見開いてからゆったりと微笑んだ。
柔らかい表情に、私まで感化されてしまう。
「ふふ…君は本当に可愛らしい人ですね。自分よりもまず相手を優先させる……
「それは弁慶さんも同じじゃないですか」
「いいえ。僕と君とは違いますよ。少なくとも僕は誰かの為に自分を後回しにしようとは思わない」
「…でも───」
でも、弁慶さんは私に外套をかけてくれたじゃないですか。
そう紡ごうとした声は、他でもない弁慶さんによって遮られた。
「僕は奏多さん、君だからそうしてあげたいと思ったんですよ」
弁慶さんはそう言ってまた冷たい指先で私の頬に触れる。
私が何も言い返せない、動けないのを分かっていて。
「弁慶さんはずるい、です」
「よく言われます」
私がそっと目を伏せれば、柔らかい唇が押し付けられる。
指先と同じ冷たい唇に、私は泣きたくなる。
「こんな遅くまで待っていてくれて、ありがとうございました」