理想と現実のはざまで
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気付いていないふりで、彼をそっと支えてあげられる人になりたかった。
でも私は生憎そんな器用な真似は出来ない。
だから正直にこの気持ちを伝えるだけ。
真正面から彼と向き合うだけ。
私にはそんな事しか出来ないから。
夜風が少し冷たい。
何か羽織るものでも持ってこれば良かった。
そんな若干の後悔をしながら、私は柱にそっともたれかかる。
一日中鍛錬していた体はすっかり疲れてしまっていて。
体を委ねると、ふわりと優しい睡魔が襲ってきた。
起きていなくちゃ駄目だ。
頭ではそう思っているのに、重たい瞼は徐々に閉じられていく。
「奏多さん、こんな所で眠ってしまっては風邪をひきますよ」
待ち望んでいた声。
ああ、ついには幻聴まで聞こえてきた。
人間はどう足掻いても眠気には勝てないらしい。
もしかしたら夢でも見ているのかも知れない。
会いたいばかりに夢にまで彼を引っ張り出してきてしまったらしい。
「んん…弁慶、さん」
大好きな彼の名を呟く。
返事などない、そう思いながら。