理想と現実のはざまで
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九郎さんは私の傍らに立って、月を見上げる。
空に浮かぶのは満月。
この世界で何度となく見上げた月。
悲しい時も。
嬉しい時も。
いつでも傍らにある存在。
現に今も、月は私の隣で彼の帰りを共に待ってくれている。
とても優しい、月。
「大した事じゃないんですけど」
「俺で良ければ代わりに伝えるが……」
「大丈夫です。やっぱり自分で伝えたいんで…九郎さんのお気持ちだけで十分です」
私がはっきりとそう伝えれば、九郎さんはふっ、と小さく笑みを零す。
穏やかな、兄のような笑みで。
九郎さん、よく私の事を子供扱いするから。
でも、それを嬉しく思う自分がいるのも真実で。
九郎さんは私の頭を撫でる。
大きな暖かい掌の感触に私は思わず目を細める。
いくつになっても頭を撫でられるのは嬉しい。
でもやっぱり年の近い九郎さんに撫でられるのは、少し恥ずかしいような気がする。
「奏多がそう言うのなら、俺はこれ以上はは何も言わん。だが夜は冷える。風邪をひくなよ」
「はい。気をつけます」
「ああ、それでは俺はこれで失礼する」