髪を下ろしたあの人は
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
願いは、沢山ある。
到底叶わない願いなら、沢山。
でも、その願いは文字として残す訳にはいかない。
軽々しく口にしてはいけないと思うんだ。
「奏多ちゃん、願い事は書けたかい?」
短冊を手にしたままで動かない私に気を遣って、景時さんがこちらへやってくる。
その場に不釣り合いな浮かない表情を浮かべていたものだから、どうやら心配をかけてしまったらしい。
私の横に腰を下ろした景時さんは窺うように私の顔を覗き込む。
「いえ……願い事、思い浮かばなくて」
「え?奏多ちゃん、願い事ないの?」
「そういう訳じゃないんですけど……」
煮え切らない態度の私に景時さんは苦笑いを浮かべる。
あ、呆れられちゃったかな。
みんながこんなにも楽しんでいるのに、空気を乱すようなことをしているから。
謝ろう。
やっぱり、不愉快だよな。
そう思って私が口を開こうとした時、景時さんがそれを遮って言葉を紡いだ。
翡翠の瞳で、私を真っ直ぐに見つめて。
「なんか奏多ちゃん難しそうな顔してるけど、そんなに堅苦しく考えなくてもいいんじゃないかな?」