あなたは私を知らなくても
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私達家族の楽しい時間を、いつだってこのカメラはファインダーに映し、写真として残してきたのだ。
私にとっては、家族同様に大切で掛け替えのないものなのだ。
私はカメラをそっと九郎さんに手渡し、構え方をレクチャーする。
「これはカメラって言って、今私達が見ているこの世界を記録出来るの…いや、正確には景色を、かな」
「?」
頭上に幾つもの疑問符を飛ばす九郎さんに愛しさを感じながら、私はリビングに飾られた写真を指差す。
差した先には、一年程前に幼馴染み四人で行った江ノ島での集合写真。
みんなそれぞれとてもいい顔をしている。
勿論、私も。
私の指先に促されて、九郎さんもその写真に視線を移す。
幸せそうに笑う私達に、自然と九郎さんの口元も緩んでいるように見えた。
「あれを、このカメラで撮ったんですよ」
「おお!この箱でそんな事が出来るのか!」
まるで子供みたいに、九郎さんは瞳をきらきらと輝かせる。
本当に、この人はとても純粋な人だと思う。
私よりも年上なのに、時折それを全く感じさせない。
無邪気で。
澱みなくて。
すごく羨ましい。