あなたは私を知らなくても
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私は伸ばしていた手を引き戻す。
晴れてはいるけれど、季節は冬。
外気に触れた手は体温を奪われ、すっかり冷たくなってしまった。
私は両の掌を素早く摺り合わせながら息を吐きかけて暖をとる。
この動作はつくづく人間の本能なのではないか、と思わずにはいられない。
ついつい寒くなると手をさすってしまうのだ。
「やっぱり雪が降ると寒いですねー」
言葉と共に吐き出される息は雪と同じように真っ白で。
空へ向かうその白を私は目で追った。
ふと視線を外したその一瞬に、私の右手は攫われた。
私より一回り以上も大きな掌に包まれた手は、滑らかな動作で九郎さんの方へ。
いや、正確には彼のダウンのポケットへ。
「く、九郎さん!?」
「こ…こうしていたら寒くないだろう!!」
そう口にした彼の耳は真っ赤で。
雪のコントラストがあまりに綺麗で、私は思わず笑った。
私は九郎さんのこんな不器用な優しさが大好き。
ずっと、ずっと大好き。
もうこの手を離さない。
繋いだこの掌の温もりで
雪が溶けてしまうというのなら
私はそれで構わない
この温もり以上に愛しいものなどないから──
《終》