幾千の繋がらぬ運命を越えて
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私を置き去りにしたあなたよりも本当の意味で冷たいのはきっと私の方だ。
何度も何度も後悔してきた。
逃げたい衝動に駆られたことだってある。
でも。
その度に私は思いとどまってきた。
きっとやめたとしても私は後悔する。
どうせ苦しむなら、利用できるものは利用して、自分が望む最高の運命を導いてから消えればいい。
私が諦めることで新たに悲しむ人が増えるのも嫌だった。
全ての悲しみは、虚な私が背負えば誰も悲しまなくて済むから。
「知盛……?」
顔が見えないから知盛がどんな顔をしているのかが分からない。
とても不安で心細くなる。
手を押し退けようとした手を、もう一方の手で絡み取られて縛られる。
必死に抵抗するのに、少しも振りほどけなくて。
懐かしい記憶だけが胸に鮮やかに蘇る。
今のこの瞬間は──
まるであの遠い日の熊野みたい。
あなたと過ごした刹那のような時間。
至福の時。
このまま時が止まればいい、と何度思ったことか。
あなたの声が、どうしようもなく愛しい。
「──時空を越えることができるのは自分だけだと思うな。自分だけが特別な存在だと思い込むのも終わりにしろ、奏多」
唐突に解放された手の先に、少し悪戯に微笑むあなたがいる。
どういうことなのか私には分からない。
時空を越える力を持つのは白龍の逆鱗だけ。
そして、それを持つのは私とリズ先生だけ。
それなのに、どうして知盛が時空を越えられるのか──
訳が分からなくて、私は白龍の逆鱗を握り締める。
だけど私のそのてを知盛は優しく包み込んだ。
「逃げようとしても無駄、だぜ?俺はお前を離すつもりはない。二度と、な」
「……っ!」
「何処に、何時の時空に逃げようと、どこまででも追い掛けてやるさ」
知盛は腰に携えた袋から「何か」を取り出した。
彼が取り出した、私のよく見知った「それ」に私は一瞬言葉を奪われてしまった。