あなたは私を知らなくても
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戦装束ではなく、ダウンとデニムに身を包んだ彼はどこからどう見ても二十代前半のどこにでもいそうな好青年で。
誰も彼がかの有名な源九郎義経だとは思いもしないだろう。
時折あの世界とのギャップから奇想天外な行動を取る事もあるけれど。
それでも彼は着実にこの世界に馴染みつつあった。
それはとても嬉しい事で。
誰よりも私自身が望んでいた事の筈だった。
でも時折寂しくなる事もある。
変わっていく九郎さん。
この世界の事を知る内に、彼が私から離れていってしまうんじゃないか。
そんな不安に駆られる事もある。
でも、今は。
彼は私の横で笑ってくれている。
とりあえずは、それだけで十分だ。
「何が変な感じなんだ?」
頭に疑問符を浮かべながら九郎さんが尋ねてくる。
小さく傾げた首が可愛らしい。
私はそっと青い空を指差して口を開く。
話す内容を全くまとめてはいなかったけれど、ニュアンスで伝わるはずだ。
いつだって私達二人はそうだったから。
お互いに言葉足らずで。
自分の気持ちをうまく相手に伝えられなくて。
でも、私達はいつも言葉ではない何かで足りないものを補い合っていた。