あなたは私を知らなくても
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私は座ったままの状態ではあるが頭を下げる。
頭を下げていれば、すぐに九郎さんは立ち去ってくれるだろう。
勝手にそう思ってた。
でも一向に遠ざかる足音は聞こえてこない。
痺れを切らした私はゆっくりと顔を上げる。
すると九郎さんは呆れた表情で私を見下ろしていた。
「お前は本当に強がりだな。だから放っておけないんだ」
「く、九郎さんっ!?」
九郎さんはそう言うなり、私の腕を掴んで立ち上がらせる。
掴まれた部分が少し痛い。
もしかしたら九郎さん、怒ってるのかも知れない。
私はそのまま九郎さんに腕を引かれ、ずるずると連行される。
行き先は──聞かなくたって分かる。
間違いなく宴の席だ。
「あっ、あの、私…!!今はとてもそんな気分じゃ…」
「強がるならとことん強がれ!!そして辛くなったら俺に全て包み隠さず話せ。分かったな!!」
なんて強引なんだろうか。
でも不思議と嫌じゃない。
九郎さんになら、委ねてもいい。
素直にそう思う。
「……はい」
小さく頷けば、九郎さんは満足そうに微笑んで。
私も思わずつられて笑う。
宴の席まであと少し。
貴方がそう言うから
貴方がそう言って笑うから
私はそれに甘えてしまう
でも、いいの
平気なの
弱い私を、貴方が守ってくれるから──
《終》