あなたは私を知らなくても
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握り締められた手を、私はそっと握り返す。
もう二度と離したりしない。
幾度となく時空跳躍を繰り返し、私は命の価値が少しずつ分からなくなりかけていた。
失敗したならもう一度繰り返せばいい。
私は、死なない。
龍の逆鱗があるから。
でも。
そうじゃない。
そんな事じゃないんだ。
これで、終わりにしなきゃ。
次がある、なんて考えちゃいけないんだ。
だって、私に“次”があっても、みんなには無い。
今私の前にいる九郎さんには、無い。
そう思ったら、感傷に浸っていてはいけないと思った。
立ち止まっていては、駄目だと思った。
前に、進まなきゃ──
「奏多?」
貴方が私の名を呼ぶから。
貴方が私を見てくれるから。
どんなに汚れてしまっても、私は這い上がろうと思える。
「私、もう負けません。平家にも、自分にも」
「あぁ…!!それでこそ奏多だ」
私は月を見上げた。
赤く輝き、私達を照らす月。
私の掌と、同じ色──
それでも、私は戦う。
貴方の為に
私自身の為に
《終》