あなたは私を知らなくても
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何も言わず、立ち去ってくれたなら、どれだけ良かったか。
私を好いてくれた源九郎義経は、今此処にはいないのに。
私との思い出は、今目の前のこの体には宿っていないのに。
九郎さんは、私の手をそっと引いた。
橙の瞳が、私を捕らえて離さない。
「奏多、お前は俺によく似ているからな。お前の考えている事は何となく分かる」
「……」
「お前の手も、俺の手も、何かを抱くには、もう汚れ過ぎているのかも知れない。でも…互いに守りあう事位は出来るだろう?」
何の為に太刀を振るうのか。
何の為に傷付くのか。
そして、何を手に入れんとしているのか。
九郎さんは、それを分かっているんだ。
全てを受け入れ、そしてその上で前へ進もうとしているのだ。
貴方はいつだって変わらない。
私を導いて、光を与えてくれる。
「お前になら、頼られるのも、縋られるのも悪くはない」
「九郎さん……」
低めの落ち着いた声に、心拍数が上がるのを感じる。
ああ、そうして私はまた貴方に惹かれていくんだ──