あなたは私を知らなくても
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私は穢れている
心も、躯も
真っ白だったはずの
私の
てのひら
それが今はこんなにも
私はもう、戻れない──
《汚れたてのひら》
ぼんやりと月を眺める。
白い旗の広がる陣中の片隅で。
人々のざわめきを、何故かとても遠くに感じる。
まるで、世界から私だけが切り離されてしまったような。
時の流れから取り残されてしまったような。
妙に高揚した気持ちを抑えられぬまま見上げた星空は、嫌味なほどに明るく、しかし静かに私を照らしていた。
逆にその静けさが、私の心を逆撫でする。
私の不浄さを浮き彫りにしているような錯覚に陥る。
戦いは、終わった。
私にとって何度目かの初陣。
もう、手が震える事はなくなった。
今はただ、血に飢えた獣のように立ち塞がる“敵”を見据えている。
「奏多…こんな所に居たのか……」
後ろから声を掛けられ、私はゆっくりと振り返る。
ひどく緩慢な動作。
疲れからではない。
何もかもが億劫な事のように思えたからだ。