あなたは私を知らなくても
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あの日分からなかった将臣の言葉、今ならば分かる気がする──」
九郎はぽつりと呟く。
だが、奏多は将臣が九郎に託した言葉を知らない。
──血の繋がり以上に大事なものなんて、この世界にはごろごろしてんだよ
「喩え兄上のご意志に背くようなことになっても、俺はお前を守り抜く──奏多、お前の望みはなんだ?」
奏多が今すぐに龍の加護を得られないなら。
人の手で、奏多の願いを叶えるまで。
九郎は優しく囁いた。
今まで聞いたことの無いような穏やかな声色に、奏多は素直に思った。
この人に自分を偽り続ける必要はないのだと。
自分の中に蠢く狂気を、曝け出しても許されるかも知れないと。
奏多は恐る恐る口を開いた。
拒絶の言葉に怯えながら。
「本当の私ごと、一緒に見て下さい。物分かりのいい、良い神子としての奏多じゃなく、私の中のずるくて、汚い部分も……」
絞り出した声は震えていた。
しかし、見上げた時の九郎の表情に。
見せてくれた笑顔に。
不安なんてどこかに消し飛んでしまった。
それだけで十分──
世界中の全ての人が
私を認めてくれなくても
たった一人
あなたが信じてくれるなら
私はこれからも
立ち向かってゆけるから──
《終》