あなたは私を知らなくても
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「私なんかが神子と呼ばれる資格なんてない。私はこんなにも穢れていて、こんなにも汚くて…九郎さんに優しくなんてしてもらえる存在じゃない」
最後は涙声になっていた。
震える弱々しい声で、彼女は語った。
ずっと言えなかったこと。
奏多は何度その言葉達を飲み込んだのだろう。
何度涙を堪えたのだろう。
今の九郎に、それを計り知る術はない。
それでも。
“これから”を変えてやりたいと思う──
「奏多、お前はどうして欲しい?」
「え?」
俺の言葉に、奏多はふと顔を上げた。
涙に濡れた瞳は、出逢った頃の奏多の瞳そのままだった。
戦う痛みも。
背負う業の重みも。
何も知らなかった頃の、あどけない瞳だった。
何のしがらみもなく、自由だった頃の。
「お前が望むなら、俺は何だってしよう……兄上を、鎌倉殿を…裏切ることになっても構わない。俺はそう思っている」
九郎の言葉に、奏多は驚きを隠せなかった。
目を見開いて、信じられないものを見るような瞳で九郎を凝視していた。