あなたは私を知らなくても
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奏多はよく笑う娘だった。
自分がどれほど辛くとも、それを周りに悟らせず、明るく振る舞っていた。
それがいつからか、彼女は心から笑わなくなった。
笑みを作りはするけれど、それはあくまでも偽りのもの。
心配を掛けない為の、彼女なりの手段。
どうして気付けなかったのだろう。
どうして側にいたのに、支えてやれなかったのだろう。
後悔ばかりが押し寄せる。
もう、取り返しのつかないことであるのに。
「…奏多、すまない」
彼女の肩口に顔を埋めて呟いた言葉。
それを聞いても、彼女は微動だにしない。
冷たい体が、腕が、九郎の体を抱き締め返してくることはない。
「…それは、何に対しての謝罪ですか?私は九郎さんに謝れるようなことは──」
「お前を守れなかった事だ!!」
奏多の言葉を、無理矢理に遮って、九郎は叫んだ。
自分の胸に燻る感情を、どんな風に、どの言葉で表現すればよいのかー全く分からなかった。
ただ、それでも伝えたかった。
奏多に分かって欲しかった。
自分の、今の気持ちを。
偽りない、飾らない思いを。