あなたは私を知らなくても
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悪いのはこの世界で。
元凶は戦で。
でも、確かに彼女を巻き込んだのは自分達で。
九郎は、奏多に何と言葉を掛ければよいのかが分からなかった。
奏多の中で、既に答えは出ている。
それを信念として、彼女は小太刀を振るい続けている。
それを打ち消すだけの強さを持つ真実を。
九郎は自分が持ち得ているとは思えなかった。
「奏多、お前はどう思うんだ?」
奏多の前に対峙し、九郎は静かに尋ねた。
手を伸ばせば届く距離にいる奏多は、月明かりを浴び、妖しい輝きを放つ。
太陽の下にいる事が、あれほど似合っていると思っていた少女は、月明かりを纏ってなお、美しかった。
彼女の内の危険な二面性。
それが今、九郎の目の前に剥き出しにされていた。
奏多は小さく首を傾げ、頬に掛かる髪を耳に掛ける。
その仕草から、目が離せなくなる。
「私は、分かりません…ただ、彼等を前にした瞬間は“こう”するのが正しいと、そう思いました」
形のよい、ふくよかな唇から紡がれる声に耳を傾ける。
頼りない声色は、先程見せた妖艶な笑みを浮かべた人物から発せられるものだとは到底思えなかった。
しかし、奏多の顔には相変わらずの冷たい笑みが張り付いている。