あなたは私を知らなくても
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腰に携えられた短めの双剣を指先で撫でながら、足下に転がる下郎の死体を踏みつけた。
聞き慣れた音であるのに、九郎は吐き気がして、思わず眉をしかめる。
「ほら、ずっと噂になっていたでしょう?夜半に女人が消える事件が続いているって。私、それが許せなくて……いけませんでしたか?」
大きな団栗のような瞳で、あどけなく見上げてくるのは確かに見紛うことなく奏多自身で。
九郎は一歩一歩、奏多に近付いていく。
死臭に混じって、奏多が気に入って愛用している香の薫りが仄かに鼻腔を擽る。
その柔らかい薫りと血の臭いとがあまりにも不釣り合いで。
目の前にある真実を、疑ってしまいそうになる。
「誰かを助けようとして、誰かを殺す。自分を守ろうとして、誰かを殺す。九郎さん、これって罪になりますか?私、処罰されちゃいますか?」
あまりに真っ直ぐで澱みない瞳と声色。
奏多はきっと、迷いなく彼らを切り捨てたのだろう。
それが、今の彼女の雰囲気からひしひしと感じられる。
何故、彼女はこんな風になってしまったのだろう。
何故、此処まで壊れてしまったのだろう。