あなたは私を知らなくても
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同時に露わになる薄紅(ウスクレナイ)色の瞳。
九郎の姿を認めたその瞳は、見開かれ、やがてゆっくりと細められた。
緩く弧を描くそれに、九郎は思わず頬を緩める。
──が、一瞬にして九郎の笑顔は掻き消えた。
見てはいけないものを見つけてしまった。
奏多の足元に。
しかしそれでも彼女は顔に笑みを貼り付けたままだ。
狂気すら含んだその妖艶な笑みに、九郎は背中に嫌な汗が伝うのを感じた。
だが、逃げられそうになかった。
いや、逃げてはならない、と九郎が心の何処かで拒否していた。
「奏多…、“それ”は……?」
九郎は震える声を何とか絞り出した。
人形のように整った顔をした奏多は、そっと視線を下に下ろす。
薄紅の瞳にやがて九郎が“それ”と形容したものが映り込む。
しかし奏多は眉をぴくり、と動かすことはなく、表情を歪めさえせず。
足下のものを捉える。
「…私が、殺しました。女の人を、困らせていたみたいだから」
九郎は近付いて初めて気付いた。
辺りに死臭と生臭い血の臭いが充満していること。
奏多の立つ地面の辺りが、不自然に闇色に染められていること。
そして暗闇の中でも映える、頬に付いた血の痕。
着物に飛び散る返り血。
そんな中であるというのに、奏多はまた柔らかく微笑んだ。