髪を下ろしたあの人は
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私が言うと景時さんは苦笑いを浮かべてから、私を手招きした。
そして口許を筒のように手で囲んでウィンクしてくる。
どうやら耳を貸せ、と言っているらしい。
景時さんの意図が掴めない私は首を傾げながらもその指示に従った。
「奏多ちゃん、今から話すのは、絶対に皆に内緒だからね?望美ちゃんにも、朔にも話しちゃ駄目だからね?」
私が耳を傾ける前に、念を押すように景時さんは言った。
私は小さく頷いてから、少し爪先立ちをして、髪を耳にかけた。
景時さんは腰を曲げて私の耳に唇を近付ける。
耳にかかる吐息がとてもくすぐったい。
頬が熱くなるのが、自分でも分かる。
「───」
景時さんによって紡ぎ出された言葉に、私は口をぱくぱくさせながら彼を見上げる。
予想だにしていなかった言葉に、私はなんと言葉を返していいのかが分からなかった。
ありがとう、と伝えるのが正しいのだろうけど、動揺しまくっていた私はうまく口が回らなかった。
「そろそろ中に入ろうか?この星空は二人だけの秘密、だからね?」
景時さんが言いながら手を翳すと、きらきらと輝いていた星々はさっと掻き消えてしまった。
またどんよりとした暗雲に覆われた空が私たちを見下ろしている。
「さ、行こう」
景時さんは私の手を引いて、廊下を歩き始めた。
でも私の頭の中は、相変わらず景時さんの言葉で支配されていた。
オレはもしも奏多ちゃんと望美ちゃんと朔が危険な目にあってたら、まず奏多ちゃんを助けるよ。
その後に絶対に二人も助けてみせる──
《終》