髪を下ろしたあの人は
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景時さんの言葉に、私は他の運命での夏の熊野で見た花火を思い出さずにはいられなかった。
皆で揃って見上げたあの幻想的な大輪の華は、何度見ても心を奪われる。
綺麗なものはいつでも私の心を潤してくれる。
「じゃあ、奏多ちゃん。暫くの間目を閉じていてくれる?いいって言うまで絶対に開けちゃダメだからね~?」
「はい」
満面の笑みの景時さんを瞼の裏に焼き付けてから、私はぎゅっと目を瞑った。
次に目を開いた時に、一体どんな魔法が掛けられているのかを自分なりに想像しながら。
景時さんの言う“魔法”は、私が元の世界で読んだファンタジー小説の中に登場するものや、ゲームの中で当たり前のように使われているものとは、全く性質を異にするものだ。
彼の使う“魔法”は、一種の陰陽術の応用なのだ。
確か幻術とも言えるのだと、言っていたような気がする。
私が耳を済ませてみると、静かな夜の廊下に景時さんの術の言の葉が紡がれていた。
力を持つ言葉は、それだけで脅威となる。
それを自在に操る為には、相当の努力が必要らしい。
私も景時さんに一番初歩的な陰陽道の術を教えてもらおうとしたけれど、一つの言の葉を御するだけで、幾日もの時間を必要とした。
そんな陰陽術を自在に使いこなす景時さんは、本当にすごい人だと思う。
「お待たせ~♪もう目を開けてもいいよ」