幾千の繋がらぬ運命を越えて
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天を仰ぐ知盛の瞳に、壇ノ浦でのあの光景が脳裏にフラッシュバックする。
──もう、見るべきものは何もないな
──あぁ、こんな日に死ぬのも悪くない。
波間に消えるあなたを、何度追いかけたいと思ったか。
幸せそうに歪められた瞳を。
私に最後に囁いた言葉を。
違う運命の中でも、あなたはいつだって私から離れていった。
そして、今回の運命でも。
私の伸ばした手は、虚しく空を切った。
それなのに、どうして。
「…本当に……知盛…?」
以前間違えたことがある。
やっぱり知盛は壇ノ浦の海に消えて。
還内府である将臣の頼朝襲撃。
景時さんの裏切り。
みんなで一緒にいることができなくなったあの運命で。
九郎さん達と逃げなくてはならなくなったあの運命で。
私はあなたの弟である重衡さん、銀に出逢った。
髪も瞳も本当にそっくりで。
あなたが海から還ってきたのかと思った──
あの時の私は知らなかったとはいえ、銀に酷いことをしてしまった。
記憶のない銀とあなたを重ねてしまっていたんだ。
もう、同じ過ちは繰り返したくない。
何も知らないまま、誰かを傷つけてしまいたくない。
確かめるように、私は知盛を見上げた。
「クッ、やはりお前はいい瞳をする。……変わらないな、いつのお前も」
「知…盛……?」
「疑うのはお前の勝手だが……俺は平知盛だぜ」
射抜くような瞳に、私は言葉を紡げなくなる。
知盛の言葉の違和感にも、何と言えばいいのか分からない。
熱が身体に籠るせいで、うまく頭が回らない。
心臓の音ばかりがやけに煩くていらいらする。
「…信じて……いいの?」
掠れる声に、知盛の瞳が柔らかく歪められる。
怒っている訳ではない。
嘲っている訳でもない、と思う。
だって頬に触れ、滲む汗を拭ってくれる手が。
とても、優しかったから。