髪を下ろしたあの人は
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年に一度だけ
たった一度だけ
それだけしか
愛しい人に逢うことを
許されなかった彼らは
たった一度の短い逢瀬に
何を願っていたのだろう
《見えない星空》
今日は七月七日。
織り姫と彦星が年に一度だけ再び逢うことを許された日。
それなのに。
夜空は厚い暗雲に覆われている。
「…ほんと……最悪」
私は曇天を睨み付けながら呟いた。
私がぼやいたところで曇が晴れることはないと分かっていたけれど。
「何が最悪なんだい、奏多ちゃん?」
優しい声と共に肩にふわりと羽織りをかけられる。
香の甘い馨りに、私はゆっくりと振り返る。
「まだまだ暑い日が続くけど、夜は冷え込むから気をつけて」
「ありがとうございます、景時さん」
景時さんはつい今し方まで私がしていたように、真っ暗な空を見上げた。
月も星も無い空はいつもに比べてずっと深くて暗い。
漠然と眺めていると吸い込まれてしまいそうな気がする。
景時さんは私が夜空を見上げていた意味が分からないのか、首を傾げて私を見つめてくる。
そんな時の景時さんはとても子供っぽくて、翡翠色の瞳をきらきらと輝かせている。
戦奉行をしている時とは全く別人の顔だった。