幾千の繋がらぬ運命を越えて
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怨霊達の断末魔の叫び声が聞こえる中、私は意識を手放した。
願わくば、次に目が覚めてもあなたが側にいますように。
私が名を呼べば、少し不機嫌そうな紫水晶の瞳を向けてくれますように。
“知盛”
あなたの腕が、私を抱き締めてくれますように──
***
あれからどれ位の時間が流れたのだろう。
瞼が赤く染められるのを感じて私は目を覚ます。
体がだるく、そして重たくて思うように動かす事ができない。
それでも何とか無理矢理に上半身を起こす。
赤い夕陽が眩しくて、私は目を細める。
その時ようやく自分の今置かれている状況に気がついた。
額から滑り落ちた、水で濡らされた小さな布。
私を包み込むように木に凭れ掛かるのは。
幻じゃなかったんだ──
少し長めにざっくりと切られた銀糸の髪。
切れ長の桔梗の花にも似た紫紺の瞳。
整った顔の形にがっちりとした体躯。
ずっと、あなたに……逢いたかった。
あなたに逢って、今度こそ守りたかった。
一緒に生きたかった。
叶わないと思っていたのに。
それなのに。
確かな形を得て、今、あなたは此処に居る。
今、ゆっくりと私を見下ろしている。
「そんな弱った躯で戦場に出ればどうなるか……源氏の神子ともあろうお前が、分からなかったとでも言うのか?」
知盛は問答無用で私の体を自分の膝に凭れ掛かるようにして倒し、額を押さえ付けた。
その後、私の腹部に落ちていた、私の熱ですっかり温くなってしまった布を持っていた水筒の水で浸し、また私の額に乗せた。
ひんやりとした布が、火照った身体にとても気持ちがいい。
どうしてかな、私もしかして風邪でも引いてたのかな。
「……無自覚、か。ここまで悪化するまで誰も気付かないとは天…お前の八葉とやらは一体何をしているのか……」
呆れた、といった口調で知盛は言った。