幼馴染みと恋人の境界線
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「えっ…ちょ、将臣っ!?」
「だから荷物持ちでついて行ってやるって言ってるだろ?」
「や、でも一人で大丈夫だって」
「大丈夫じゃなかったら困るのはお前なんだぜ?ほら、さっさと歩く!」
俺は引き摺るように奏多の腕を引く。
おいおい、ちゃんと飯食ってんのかよ。
前から細い方だとは思ってたけど、また一段と痩せてんじゃねぇか。
譲がいるから飯の心配はないと思ってたけど、奏多自身に原因があるみたいだな。
「朔ー助けてよー」
奏多があまりにも情けない声をあげるものだから、朔もにこにこと笑っている。
どうやら奏多の救出の要請に応えてやるつもりはないらしい。
まあ、俺としても、朔に邪魔されたくらいで奏多
を譲るつもりはないけどな。
「将臣殿がついて来てくれて良かったじゃない。荷物を持たなくても済むじゃない」
「そうだぜ奏多、有り難く思えって」
「そういうの優しさの押し売りって言うんだよ!」
俺の手をいとも簡単に振り解き、ひらりと廊下に駆け出す。
その後べーっと舌を出して、走り出してしまった。
部屋には俺と朔の二人が取り残される。
沈黙が気になって、俺は取り留めのないことを口にする。
「ったく、逃げ足の速さは子供ん時から変わらねぇんだな」
「ふふ、何だか意外な感じがするわ」
「そうか?」
「ええ。奏多はどんな状況に直面しても、逃げたりせずに正面から立ち向かっていくような感じがするから」
朔は奏多が消えた方向を笑みで眺めている。
それはあながち間違ってはいない。
奏多の逃げ足が速いのは本当にどうでもいい時だけだからな。
肝心の時は俺でも驚くくらいに果敢に立ち向かうから。
「……最近奏多の様子がおかしいの。聞いても何も答えてくれなくて……」
朔は不安げにゆっくりと口にした。
俺の目を真っ直ぐに力強く見上げてくる。
それが龍神の神子たる所以なのだろうか。
「あなたなら何とか出来るような気がするの。……奏多を……お願い」
必死な朔の眼差しに俺は笑った。
肯定の意味を込めて。
言われるまでもないさ──