人ならざるものであっても
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勇気を振り絞って、自分の気持ちを口にする。
すぐ隣を誰かが通ったって、どうせ雨の音で聞こえはしない。
この傘の中にいる、私と敦盛くんにしか聞こえないはずだ。
だから、今なら言える。
言わなくちゃ、だめだ。
「私が、敦盛くんと一緒に帰りたいの」
有川家に居候する形になっている敦盛くんと二人きりになれる機会はとても少ない。
休みの日に出掛けようとなっても、結局いつのまにか大所帯になってしまうのだ。
仕方がないといえばそうなのかも知れないのだけれど、やっぱり好きな人とは二人きりになれる時間が欲しい。
「…そうだな。私も奏多と一緒に帰りたい」
「うん!じゃあ一緒に帰ろ!」
そう言って私は敦盛くんにそっと寄り添った。
今度ばかりは敦盛くんも慌てたりしない。
「奏多、あまり近付いては…」
「大丈夫。傘で隠れて、誰と誰が傘の中にいるかなんて分からないから」
笑顔でそう言えば、敦盛くんは少し頬を赤く染める。
そんな態度を取られては、私の方まで恥ずかしくなってしまう。
だけど、それも構わない。
どれだけ赤くなったって、傘に隠されて敦盛くん以外の誰にも見られることはないのだから。
どんなチャンスもものにする
それはあの遠い異世界で
学んだことの一つ
手をこまねいて見ているだけでは
決して前へは進めない
だから私はこうして時々背伸びをする
少しでも君に近づけるように──
《終》