幾千の繋がらぬ運命を越えて
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もう躱す力すら残っていないのは、自分の身体だから自分が一番よく分かる。
昔は、自分の最期がこんなにも呆気ないものだとは思っていなかった。
応龍の神子として、華々しく戦場で散るのだとばかり想像していたから。
でも、そんなのも悪くない、かな。
それも私の可能性の一つであるのなら。
だから私は閉じてしまいたくなる瞳をぐっと見開いた。
今まで、どんな運命だって見届けてきた。
涙が涸れてゆく感覚も知った。
目を、背けてはいけないと思った。
逃げてはいけないと思った。
自分の、最期から──
振り下ろされる刃こぼれの酷い刀。
私の眼の前を遮る何か──
次の瞬間に耳に届く刃が交わる音。
肩に触れる温かい掌。
懐かしい横顔。
「どう……して……?」
震える声を絞り出しながら私はあなたに触れる。
冷たい鎧の間から覗く、鍛えられた、筋肉ばった腕に。
もうずっと触れていなかったあなたの身体に。
あなたは私の方をちらりとも見ずに、怨霊を斬り捨てた。
しゃがみ込んだままの私に一瞥もくれることなく、私を立ち上がらせ、覆い茂った叢の中に押しやる。
そして何事も無かったかのような表情で叢を出て怨霊との決着を着けに向かう。
これは幻なんだろうか。
私の願望が造り出した夢?
──違う
あの時のぬくもりは嘘じゃない。
一度も私を見てはくれなかったけれど。
でも、現実と幻を見間違えたりしない。
だけど、この運命の中であなたは死んだはずだ。
私が、殺した──
あなたの身体を貫く感触を私の躯は覚えている。
忘れられるはずなんてないんだ。
あの夏の壇ノ浦。
晴れ渡った、澄みきった青い空。
あなたの声。
私の内側で何かが崩れさる音。
居なくなった本当の私。
そう、思ってたのは間違ってたのかな。