あの遠き海へ願う
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ヒノエはその言葉通り、とても勤勉だった。
いつの間にか携帯は私よりも使いこなしているし、朝だって経済新聞なんて読んでいたりするのだ。
そんなもの私だって読んだことないのに。
「何がそんなに姫君を困らせているんだい?姫君を困らせるのは、オレだけで十分なんだけど…」
そう言いながら、ヒノエは私の問題集を覗き込む。
長い睫毛が伏せられて、頬に影を落とす。
美しいその横顔に私は思わず目を奪われてしまう。
「ねぇ、奏多…もしかして、オレを誘ってるの?」
「…は、はいっ!?」
「そんなに潤んだ瞳で見つめられたら、さすがのオレも抑えがきかなくなりそうなんだけど?」
いつもより低い声で、私に囁きかけてくる。
指先が私の頬を撫で、そのまま唇へ移動する。
抵抗すればいいだけなのに、それが出来ない。
駄目だ、駄目だ、駄目だ。
流されてしまいそうになる自分を何とか律して、ヒノエの手を掴む。
「今は、駄目。今日宿題を終わらせられなかったら、結局居残りさせられて、一緒にいる時間が減っちゃうんだから」
「ふふ、残念」
「分かったら下で待ってて。頑張って終わらせるから」
「その割に、今諦めて突っ伏していたみたいだけど?」
「う…それは…」
言い返す言葉もない。
行き詰まってしまっていたのは事実だから。