あの遠き海へ願う
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私の中のヒノエが唯一の一番であるように。
ヒノエの中の一番も、私であって欲しいんだ。
「ねぇ、ヒノエ。今ならまだ間に合うよ」
「ん?」
「今ならまだ、引き返せるよ」
先程のヒノエと同じ言葉を紡ぐ。
私は卑怯だ。
解答など、ずっと前から分かっていたくせに、わざとヒノエの口から言わせようとする。
これは口実だ。
ヒノエに責任を押し付ける為の。
自分自身を正当化する為の。
ヒノエは小さく笑って、私の体を離した。
それは“終わり”の合図。
“始まり”の証。
「オレの意志も変わらないさ。奏多を愛してる。でも、熊野も大切だ」
「そうだよね。でも、私はそれがどうしても嫌なんだ」
大切な人の一番でありたい。
大切な人が幸せならそれで構わない。
私はまだまだワガママな子供だから、そんな風に割り切れない。
「たまには力尽くでいくかな。どっちも手放したくないからね。覚悟しなよ、奏多」
そう言って押し付けられた唇。
ほんのり感じた血の味に、ヒノエの悲痛を知った。
聞き分けのない子供
私はいつまでも我儘で
それでも君は私を甘やかす
口腔を侵す血の味
それは君が、
今も私を愛してくれている
何よりの証──
《終》