あの遠き海へ願う
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かたん、と私の真後ろに着地する音。
でも、私は決して振り返らない。
振り返ってしまったら、必死の思いでした決意が、揺らいでしまいそうな気がして。
「ねぇ、奏多。今ならまだ、引き返せるよ?」
やっぱり。
ヒノエは私が熊野を攻めることを知っている。
今これだけの軍を率いているから当たり前だけど、ヒノエはおそらく、それ以前から分かっていたはずだ。
烏からの情報で。
楽に落とせるとは思ってはいなかった。
しかし、今のヒノエの口調や声色から察するに、しっかり準備をしているはずだ。
「今なら、まだ間に合う」
ヒノエはそう言って、私の体を後ろからそっと抱き締める。
華奢だけれど、しっかりと鍛えられた身体。
私より、ずっとずっと逞しくて。
私は何度もその腕に抱かれてきた。
それを忘れた日は一日だってない。
だからこそ、ヒノエもよく分かっているはずだ。
私がどういう女なのか。
「私がそう言われて引き返すとでも?」
「そうだね。源氏の戦姫ならそうだろう。でもお前はもう神子じゃない」
「神子じゃなくなっても、私は私よ」