人ならざるものであっても
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足は自然と裏庭へ向かっていた。
まず其処が頭に思い浮かんだからだ。
四季折々の花が咲き乱れるその場所が、奏多のお気に入りだった。
移りゆく日を、はっきりと感じる事が出来るのが好きだと彼女が言っていたのを覚えている。
今にも消えてしまいそうな儚い姿と、蚊細い声。
触れれば壊れてしまいそうな危うさに、敦盛はどうする事も出来なかった。
雨は、相変わらず降り注いで、京を、世界を包み込んでいた。
灰色の世界の真ん中に、色彩を持つ少女は静かに立ち尽くしていた。
雨に浸食されゆく世界の中で、それでも尚、燦然として其処に在る。
敦盛は思わず傍らにあった番傘に手を伸ばし、奏多に 駆け寄った。
「奏多殿っ!!」
傘を差し掛け、その名を紡げば、少女はゆったりとした動作で敦盛を振り返る。
青ざめた表情には、敦盛が見ても分かるほどの疲労が滲み出ていた。
雨の雫が伝う頬に、敦盛は思わず手を伸ばす。
自分が汚れていると理解しながら。
それでも彼女に触れたいと願う。