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「これは…?」
「私の宝物。巾着はスミレおばあちゃんから貰ったんだよ」
そういえば、この巾着を人に見せるのは初めてな気がする。
将臣にも望美にも見せたことはない。
菫色の巾着を受け取った時、スミレおばあちゃんは何故か“みんなには内緒だよ”って言っていたから。
でも、譲を説得するには十分な効果を発揮するはずだ。
そして私自身にとっての戒めと希望の糧になる。
生きることを諦めてしまわないための力になる。
「中に私が今まで大切にしてきた物が詰まってるから。だから、預かってて」
「これを必ず取りに戻ると?」
「そう。人質ならぬ物質(ものじち)、だね」
「分かりました。お預かりします。その代わり、絶対に無茶しないでくださいね」
優しい笑みを向けられて、私は一度だけ頷いて、譲の胸にそっと額をくっつけた。
抱き締めて、とは言わないから。
さよならの代わりに触れさせて欲しかった。
ひとときの別れ
これを永遠にするつもりなんて
絶対にない
何があっても
手足をもがれても
必ず君の元へ帰るから──
《終》