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そう言って穏やかな表情を見せる奏多先輩はどこか遠くを見つめているような気がして、すぐ目の前にいるのに奏多先輩との距離を痛感させられた。
近いようで、実はすごく遠い。
近付けたような気になっても、冷静に見てみればいつも奏多先輩はいつだって俺よりもずっと先にいる。
そして先程の奏多先輩の言葉が表すように、俺との距離よりも、兄さんとの距離の方がずっと近いような気がするんだ。
同じ“幼馴染み”といいカテゴリーの中にいるはずなのに。
一生縮まることのない、“一年”という隔たりがどうしようもなく疎ましい──
どろどろとした感情を持て余したままで奏多先輩を見つめていれば、そんなことには全く気付いていない奏多先輩がこれ以上ないくらいに眩しい笑顔を俺に向ける。
ああ、どうして貴女はそんなにも罪作りなんだろう。
いっそ冷たい言葉を吐きかけて、俺を突き放してくれたら楽なのに。
「本当は二人分見るのも大丈夫だけど、今日は譲と二人で勉強したかったからね。将臣にはちょっと悪いことしちゃったな」
無意識の内に、貴女はいつだって俺の心を揺さぶるんだ。
もしかしたら今日の俺の本心でさえ、貴女にはお見通しなのかも知れない。
だけど、言い訳はまだ、胸の内に。
ほんの少しだけでいい
貴女と二人きりで過ごす
時間をください
それ以上のことを望んだりしないから
彼女の瞳に映るだけで
俺は幸せなんだから──
《終》