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兄さんの言葉に、奏多先輩は困ったような表情を浮かべていた。
本当はすぐにでも断って欲しい。
だって今日は俺が奏多先輩に勉強を教えてもらうはずだったんだから。
奏多先輩にお願いをするのに、俺がどれだけ勇気を振り絞ったか…
兄さんには一生かかったとしても、絶対に分かりはしない。
俺が苦労してやっと奏多先輩に伝えた言葉を、まるで挨拶を交わすのと同じような感覚で口にしてしまえるんだから。
だけど兄さんの発言に対して、俺が嫌だ、と否定することは出来ない。
兄さんの勉強をみてやることで、実際に負担が増えるのは俺ではなく奏多先輩だから。
勉強を教えて欲しい、なんて本気なのか定かでない言葉を無碍に出来ないのは、奏多先輩が真面目だから。
本当に優しいから。
祈るような、縋るような心境で事の顛末を見届けようとしていれば、奏多先輩は予想外の言葉を口にした。
「今日は譲に勉強を教える約束してたから、将臣は近々また今度ね」
二人いっぺんに面倒見れません。
そう言いながら、奏多先輩は俺の部屋に向かうべく階段を登り始めた。