何よりも優先すべきは
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リズ先生はそう言って、私の身体を抱き寄せた。
久し振りに触れた人肌はとても温かくて。
衣越しであるのに伝わる熱に、感触に、思わず泣きそうになる。
緩やかに流れる春の空気と、リズ先生の優しさに。
まだ私は生かされているのだと妙に実感した。
「私が笑えば…リズ先生も嬉しい、ですか?」
「無論…時空を越える術を得たお前は、もう知っているのだろう?私の、望みを」
「…はい」
リズ先生が戦う理由、願い。
それは白龍の神子を守ること。
そして私を死なせないこと。
いつも決して多くを語らない彼が、私に正直に打ち明けてくれたこと。
そんな大切なことを、忘れられるはずがない。
「知っているのならば、一人で寂しい顔をするのは止めなさい。奏多、お前には私がいる」
「…はい、先生」
笑うなら皆の前で。
泣くのなら彼の傍らで。
いつの日か、彼が私に言ってくれたことだ。
ああ、どうして私はいつもこう意固地になってしまうんだろう。
私の側には、こんなにも優しい人がいてくれるのに。
「ごめんなさい。これからはいっぱい頼らせてもらいます」
リズ先生を見上げてそう言えば、彼はまた笑ってくれた。
横目に微かに映っていた、空の青と桜の木の新緑の碧、そして私を見下ろしていた蒼を、私はきっと忘れない。
ここから、もう一度始めるんだ。
季節の移り変わりは
本当に一瞬で
気を抜いてなんていたら
私だけが取り残されてしまう
だから、時々でいいから
私が立ち止まっていないか
私を呼んで確かめて──
《終》