何よりも優先すべきは
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私が止めるのを無視して、望美はすぐに帰り支度をして、玄関へ向かう。
望美が玄関を開ければ、そこにはリズ先生がいて。
望美はその脇を抜けて、するりと家から出て行ってしまった。
「先生、お誕生日おめでとうございます!それじゃ!」
笑顔で手を振りながら、望美は走って行ってしまう。
追い掛けようにも、私の前にはリズ先生がいるものだからそれも出来そうにない。
「もう…望美ってば…」
「神子に呼ばれて来たのだが…改めた方が良いか?」
私が望美を追い掛けたいと思ったんだろうか、リズ先生は私に道を譲るように右足を後ろに引いた。
このままではリズ先生は本当に帰ってしまいかねない。
私は慌ててリズ先生の腕を掴んだ。
あの戦いの日々から少しも変わらない、逞しい腕を。
「大丈夫です。どうぞ、上がってください」
リズ先生にはリビングのソファに座ってもらって、その間にコーヒーを準備する。
私はあまりコーヒーを飲まないのだけれど、リズ先生はコーヒーの方が好きそうだから常備するようにしている。
いれるのはまだあまり得意ではないから、その内にまた勉強しようと思っていたりする。
リズ先生専用の濃紺のコップにコーヒーを注いでリビングへ運んだ。
「すいません、急にお呼びしてしまって」
リズ先生の前にコーヒーを置きながら謝罪する。
本当ならあとでリズ先生に会いにいこうと思っていたのだ。
無花果のタルトを持って、望美と一緒に。
それなのに、私の予定は大幅に狂ってしまって、まだ少し動揺している。
「構わない」
そういうリズ先生の表情はいつもと変わらない。
怒っているわけではなさそうだ。
その様子に安心した私は、キッチンに走って無花果のタルトを持ってリビングに戻った。
どうせなら、まだ温かいうちに食べてもらった方がいい。
ラッピングも何もされていない、お皿の上に乗っただけの無花果のタルトをテーブルに置く。
私の行動の意味が分かっていないリズ先生はほんの少しだけ眉根を寄せる。
もしかして、忘れているんだろうか。
今日が自分の誕生日だということを。