あなたは私の世界の中心
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
***
廊下に出てみると、部屋の中に比べれば幾分かましではあったけれど、お世辞にも涼しいとは言えなかった。
じわりと滲む汗を拭いながら、私は宿の庭に下りてみる事にした。
主人の客に対する配慮なのだろうか。
庭は綺麗に整えられ、あちらこちらに花も植えられている。
夜の闇のせいで鮮やかな色を見る事は出来ないが、昼間に見た庭の美しさは素晴らしかった。
でも、今こうして見る夜の庭というのも、なかなか趣のあるものだと思う。
「奏多先輩?」
物思いに耽りながら、欠けた月を見上げていると、後ろから声が掛かった。
振り返らなくても、その声の主が誰なのか分かる。
幼い時からずっと聞いてきた声だから。
「…譲。もしかして、譲も眠れなかった?」
「ええ。少し嫌な夢を、また見てしまって」
「そう……」
以前譲から半ば無理矢理聞き出した夢の話。
あの夢は、誰だって気分のいいものじゃない。
大切な人達が、傷付いていく夢なんて。
星の一族としての能力。
夢見の力。
その力を消してあげる事は、私には出来ない。
それは譲の変えられぬ宿命、だから。
「そんな顔、しないで下さいよ。だから奏多先輩には、話したくなかったんだ」