縮まらない二人の距離関係
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「奏多、お前を抱きしめさせて欲しい」
予想もしていなかった彼の言葉に、思わず呼吸を忘れた。
瞬きも忘れて、将臣殿を見つめる。
どうして、今更。
彼は私を幼馴染みと重ねてはいたけれど、肉体的な接触を求めてくることは一度たりともなかった。
年頃の殿方ならば、好意を抱く女性なら我が物にしたいと思うのが普通だと思うのに。
時折一緒に市へ買い物に出掛けたり、今日のように酒の席に呼ばれたり。
その程度のことだけだった。
だからこそ私も安心して、彼の側に居続けることができたのに。
「よ、酔っていらっしゃるのですか?」
「まだ一杯も飲んでねえのに、酔ってるわけねえだろ」
確かにそうだ。
彼の顔を見れば、それくらいのことは分かる。
私を真っ直ぐに見つめる瞳に、嘘偽りはない。
「心配すんなって。何もやらしいことなんてしねぇよ」
普通の男性であったなら、そんなことを言われてとしても疑ってかかるだろう。
でも、将臣殿は違う。
彼だけは違うと信じられる。
私は酒を横に置き、膝立ちのままで将臣殿に近づいた。
絶対、大丈夫。
自分にそう言い聞かせながら。