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奏多先輩は咀嚼を繰り返しながら、ぼんやりと柵の間から見える空を見上げている。
力のない瞳に流れる曇が映りこんでいる。
俺がその姿を凝視していることに気付いたのか否かは定かではないが、奏多先輩はぽつりと呟いた。
いつもは柔らかで聞き心地のよい筈の声は寝不足と寝起きのせいで低く掠れていた。
「ねぇ、譲。まだ夢、見るの?」
その言葉に、俺は奏多先輩に夢見が良くないということを話したことを思い出した。
気にしなくてよいと言った筈なのだが、やはり奏多先輩は気に止めていてくれたらしい。
奏多先輩は応龍の神子だ。
春日先輩と同じ、選ばれし神子。
彼女たちにはやらなければならないことが沢山ある。
俺の夢のことなどに構っている暇などないはずなのだ。
「大丈夫ですよ。心配しないで下さい」
俺は笑顔で言った。
だが、奏多先輩は納得しないようで、疑いの眼差しを俺に向けてくる。
奏多先輩の薄紅色の瞳には不思議な魔力があると思う。
彼女の瞳に射竦められると、真実を話さずにはいられないような衝動に駆られた。
それもまた奏多先輩が応龍の神子たる所以なのかも知れない。