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俺たちの、俺の知らない奏多先輩が確かに此処にいる。
ずっと側にいたつもりだった。
でもいつの間にか奏多先輩は一人でどんどん先に進んでしまっていた──
兄さんも確かに一人で何でも解決しようとしてしまう所がある。
それも一人でどこかへ行ってしまう。
でも奏多先輩は違う。
側にいるのに、とても遠い場所で戦っている。
此処ではない何処かを見ている。
「おはよー……」
眠そうな目をこすりながら奏多先輩が起きてくる。
「おはようございます。寝不足ですか?」
薄紅の瞳の下にうっすらと残る隈を見つけて俺は尋ねる。
一瞬答えに困らせてしまうかとも思ったけれど、奏多先輩はあっさりと答えた。
「寝不足だよ…だって今日は譲と出かける日でしょ?楽しみだったからさ」
花のような笑顔を向けられて、俺は直視出来ずに思わず目を逸らす。
奏多先輩は俺の側に駆けてきて、俺が握っていたおにぎりに手を伸ばす。
「おなか減ったから先に一つ食べていい?」
「仕方ないですね…一つだけですよ。兄さんには内緒ですからね」
「はーい」
相変わらず俺は奏多先輩に甘いな、と思う。
兄さんにしょっちゅう言われるけど、でも仕方がない。
だって奏多先輩が、好きだから──