あなたは私の世界の中心
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細い指先が俺の腕にそっと触れてくる。
遠慮がちではあるけれど、でも力は確かに込められている。
俺を必死に行かせまいとしている。
「将臣に、やらせなよ。学校、遅れるの嫌だし」
奏多先輩は途切れ途切れに話す。
その詰まったような話し方から、今紡がれた言葉が偽りだと分かる。
奏多先輩は言いたいことははっきりと言う人だから、こんな風に濁すことは珍しい。
俺が奏多先輩を見下ろしたまま身動きが取れないでいると、奏多先輩は何をはやとちりしたのか頬を赤く染めて俯いた。
そしてか細い声で呟く。
隣にいる俺がやっと聞き取れる声量で。
「…それに…譲と二人で学校行きたいし」
どうしてあなたはそんなにも俺の心を掴んで離さないのだろう。
捕らえたまま、連れ去ろうとする。
「…俺もです。じゃあ行きましょうか」
俺が言うと奏多先輩はどちらが後輩なのか分からないような子供っぽい笑みを浮かべ、大きく頷いた。
昔のままを望みながら、あなたは先へ進むことを渇望する。
どうしようもない矛盾を孕んだあなただけれど。
きっとそんなあなただから愛しいと感じるんだろう。
そうして俺たちは家を後にした。
《終》