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俺は遙先輩の言葉の意味が分からなかった。
だからつまり沈黙を守ってしまうわけで。
俺のそんな態度に、遙先輩はますます不機嫌になる。
遙先輩はあまり感情を露骨に露にするタイプの人間ではなかったけれど、今ははっきりと機嫌を損ねている事が分かる。
いつもは穏やかに輝く薄紅の瞳が心なしか吊り上がっているように見える。
小さな赤い唇も固く引き結ばれている。
「今、何て言ったの?」
遙先輩はもう一度繰り返す。
だが今度は次の言葉を矢継ぎ早に紡いだ。
「…遙、先輩……?」
ああ、そういう事か。
漸く彼女の表情と言葉の意味を理解した。
「そうでしょう?だって中学では先輩に当たる訳ですし」
「敬語も、名字に先輩付けも、私は嫌」
駄々を捏ねる子供のような瞳で遙先輩は俺を見上げてくる。
握り締めた手には力が籠められている。
俺はどうしようか悩んだ。
遙先輩の願いを聞き入れるか、否か。
「昔みたいに…名前で呼んで」
懇願するような眼差し。
潤んだ瞳。
俺の心を揺さぶるには十分だった。