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「譲も薄情な男になったねー。一体誰に似たのか…」
遙先輩は明らかな冗談混じりの声で言った。
慌ててはいたようだけれど、遙先輩も遙先輩で兄さんを起こしてやるつもりはないらしい。
遙先輩だって十分に薄情だ。
俺はそんな自分の事は棚に上げているまだまだ子供な遙先輩に口許を緩めながら作業を続けた。
わざわざ家まで来てもらっているのに俺達二人まで遅れる訳にはいかない。
「あ、焦らなくていいからね。別に遅刻したって構わないし」
俺の心を読んだかのように、遙先輩はぽつりと呟いた。
だがあくまでも視線は俺の作る弁当に注がれている。
物欲しげな眼差しに、俺は兄さん用に作っていた簡易の朝食を遙先輩に差し出す。
簡易というのは、そんな凝ったものではなく、卵焼きとウィンナーと榎のベーコン巻きが二つずつしか皿の上には乗っていないからだ。
俺の行動に驚いた遙先輩は本気で目を見開いている。
「お腹、減っているんでしょう?兄さん用に作ったんですけど、良かったら食べて下さい」
「へ…減ってないよ。将臣の分食べちゃ悪いし」
遙先輩はそう言って否定するけど、身体はどこまでも正直で。
二人に落ちた沈黙の間に、小さな可愛らしい腹の虫が鳴いた。