優しすぎた世界
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「本当、素直じゃないね」
「うるさい」
ラッピングされた箱を右手に握りしめたまま樹の身体を抱き寄せる。
華奢な身体は少し力を入れると折れてしまいそうで。
いつも壊れものを扱うように大事に抱き締める。
もう二度と誰かを失う経験をするのはごめんだから。
「樹…ありがとな……でも、また痩せたか?」
「うるさい」
素直にお礼を言えても、どうしてもその後に皮肉めいた言葉を付け足してしまう。
変わりたい。
もっと樹を大切にしたいと思っているのに。
十年以上積み上げて来たものはそう簡単には変えられる筈もなくて。
でも、少しずつでも変わっていければいいと思った。
樹が一日遅れでも、俺を思ってバレンタインのチョコを用意してくれたように。
俺も自分のペースで遅れてでもいい、良い方向へ変わっていければいい。
当たり前を切り崩して作った関係は
想像していたよりもずっと心地よくて
普通の恋人のようには
まだ振る舞えないけれど
素直に感謝の気持ちくらいは伝えようと思った──
《終》