優しすぎた世界
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別に何もいらない
そう思っていた筈なのに
実際にそういう状況に陥れば
やっぱり何か欲しいと思ってしまう訳で
そんな俺の気持ちは
どうやらお前には筒抜けらしい──
《一日遅れのバレンタイン》
いつものように屋上でだるい授業をさぼる。
もう留年をする訳にはいかないが、あかねに連れられて前半真面目に授業に出席していた為に、まだ少し出席日数に余裕がある。
屋上に大の字で寝転がれば、昼下がりの日差しが心地よくて、必然的に俺の瞼も重くなる。
小鳥のさえずりや、通り抜けていく風の音に耳を傾ける。
穏やかに過ぎていくこの時間が、俺は何よりも大好きだ。
少し、いやかなり寒いけれど、そんな事は気にしない。
「こんな所にいたら、いくら天真でも風邪、ひくよ?」
いきなり高い声が降ってくる。
それに驚いた俺が瞳を開けば、目の前には樹の姿。
それも吐息がかかりそうな程の至近距離。
俺はその場に硬直してしまい、咄嗟に動く事が出来なかった。
その時の俺がよほど驚いた顔をしていたんだろう。
樹は嬉しそうにくすくすと笑った。
「すごくびっくりしたみたいだね。驚かせてごめん」
言いながら樹はゆっくりと上体を起こし、立ち上がった。
遠ざかる身体に少しの残念さを感じながら、俺も樹と同じように身体を起こした。
ほんの少ししか横になっていない筈なのに、大きな倦怠感が襲っていた。
これだから午後の授業サボリは気持ちがいいのだ。
この気怠い感じが最高にたまらなかった。